【期間限定公開】エーラス・ダンロス症候群㊙情報

クレムリンの歌う兵器、不屈の軍楽隊「アレクサンドロフ・アンサンブル」の職人芸っぷりを力説したい ①彼らは何者なのか

kappra01 日記
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ソ連時代から脈々と受け継がれし神業集団、アレクサンドロフ・アンサンブル。日本でもガチ勢をたまに目撃するので、全く知られてないわけじゃないと思うけど、もっと知られてほしいのでニワカだけど語ってみる。

ちなみに私のサポート時期は2016年前後~現在。ロシア語能力ほぼゼロ、共産趣味はありません。共産趣味はありません。(念のため2回言う)

さらに、芸術的教養もゼロ。バレエとかミュージカルとか全く興味はないのに、なぜかアレクサンドロフ・アンサンブルだけが刺さった。その後、他のバレエとかミュージカル的なものとかチラっと見てみたんだけど全く刺さらず。結局、今のところロシアの軍楽隊以外は食いつかない。謎。

上記のようなザル知識な為、肩書や経歴などは全て頭に「たぶん」をつけて解釈してください。翻訳ミスった状態で見聞きしてるかもしれんので…

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悲劇で知る

アレクサンドロフ・アンサンブルとは悲しいきっかけで出会った。

ワイ、そもそも2016年からロシアのポップシンガー、セルゲイ・ラザレフにドハマりしててSNSを追っかけてたんだけど、2016年12月24日の彼のインスタにえらい長文が投稿されたんよ。

内容は、未婚なのに実は息子がいたってスキャンダルをすっぱ抜かれたことについての説明だった。その時もまぁーーーーびっくりしたけども、その次の日、また慌てふためいたような内容が投下されたんよね。

それがこちら。

ぼんやぁ~とロシア語の文字と簡単な単語ぐらいは覚えてたので、出だしのкакой УЖАС!!!!が「なんて恐ろしい!」なのはわかった。

とにかく動揺が止まらない(ように見えた)ので、まるっと翻訳機にかけたところ、要約すると「アレクサンドロフ・アンサンブルのほぼ全員が航空機事故で死亡。僕たちは職業柄ほぼ毎日飛行機に乗る。ロシアではほとんどの航空会社が未だに古い飛行機で運行しているので怖い。対策が必要。」というようなことを書いていた。画像の方はニュースサイトかなんかやろうね。「防衛省が墜落したTu-154の搭乗者リストを公表」って見出しなので。

それで、「えっ?大規模な航空機事故?」と思ってニュースやTwitterを漁り、アレクサンドロフ・アンサンブルの存在を知る。

アレクサンドロフ・アンサンブルとは

どういう組織なのか先に説明しておこうね。

アレクサンドロフ・アンサンブルはロシアの軍楽隊の1つ。日本では「赤軍合唱団」という名前で知られているらしい(と言いつつ知らなかったワイ)んだけど、赤軍合唱団=アレクサンドロフ・アンサンブルではない。(?)

どういうことなのかと言うと、まずロシアには各地方に軍管区という軍の担当区域的なものが存在し、その軍管区ごとに軍楽隊が存在している。

Wikipediaによると、現在の軍管区とその軍楽隊は

  • 西部軍管区軍楽隊 (ЗВО)📸
  • 南部軍管区軍楽隊 (ЮВО)
  • 中央軍管区軍楽隊 (ЦВО)
  • 東部軍管区軍楽隊 (ВВО)
  • 北方艦隊軍楽隊 (СФ)

の5つ。(それぞれの軍楽隊の下に、海軍とか空軍とかの軍楽隊がこまごま存在してるみたい?)

で、この5つと別にアレクサンドロフ・アンサンブルと内務省アンサンブル(МВД)が存在し、こっちの2つが赤軍合唱団と呼ばれる軍楽隊なんだって。なので、「赤軍合唱団」って言ってもМВДのことを指してる場合があるわけよ。ややこいね。

こちらがその「赤軍合唱団」の片割れ、МВД。

ロシアの省庁がどうなってるのかよくしらんけど、とりあえず5つの軍管区の軍楽隊は国防省の軍楽隊で、МВДは内務省の軍楽隊(?)ということで元締めが違う。

アレクサンドロフ・アンサンブルは何なのかというと、なんなんやろね?()

たぶん、たぶんやけど、一番古い軍楽隊がアレクサンドロフ・アンサンブルで、誕生したのは1920年代。その当時はまだソ連で他に軍楽隊も存在せず、単純にソ連軍の軍楽隊として始まったんじゃないかね?要するに今で言うと国防省サイドの軍楽隊だと思うんだけど…

まぁとにかく、今の時代のアレでは、軍楽隊の中でも一番大所帯で精鋭部隊みたいな感じよ。特に国際的に重要なイベントでロシアの軍楽隊がなんか披露するって時は、いの一番で駆り出されるのがこのアレクサンドロフ・アンサンブル。ロシア軍楽隊の顔。

「アレクサンドロフ」さんについて

当たり前のようにアレクサンドロフ・アンサンブルって連呼してるけども、この「アレクサンドロフ」さんとは、アレクサンドル・ヴァシリエヴィチ・アレクサンドロフさんのことです。誰なのかというと、ソ連国歌(歌詞違いなだけなので現ロシア国歌でもある)を作曲した人で、アレクサンドロフ・アンサンブル初代のボス。超大物。もはや歴史上の人物。

もうちょい他にも説明した方がいいような気もするけど、今回は蛇足なので一旦飛ばすね。

アレクサンドロフ・アンサンブルと事故の影響

ここからはアレクサンドロフ・アンサンブルに絞っての話。

アレクサンドロフ・アンサンブル、正式名は日本語にすると「赤旗勲章二重受章 アレクサンドル・ヴァシーリエヴィチ・アレクサンドロフ記念アカデミー ロシア軍 歌と踊りのアンサンブル」。クッソ長い。

でも、コンサートやイベントでは毎回司会者の人が正式名でご紹介してくれるので、コンサート映像を見まくった結果、「Дважды краснознаменный академический ансамбль песни и пляски Российской армии имени Александрова」だけは聞き取れるようになった。継続は力なり。笑

名前の長さはまぁええんやけど、何が言いたかったかというと「歌と踊りのアンサンブル」なんですよこの集団は。

ということで、構成が①合唱団、②ダンサー、③オーケストラという大変な大所帯。メンバーの入れ替わりが頻繁にあるとはいえ、およそ①50人、②30人、③30人、その他に指揮者、監督、ソリスト(ソロのボーカリスト)を含めると、総勢130人前後。そして兵役シーズン(?)になると急に10人ぐらい増えたり減ったりする。

この大所帯が2016年の事故をきっかけに大変革せざるを得なくなってしまったので、それぞれ事故前、事故後にどうなったのか説明しよう。

事故前のメンバーについて

こちらが2016年当時のメンバー。(ちなみに場所はあのスパスカヤ・タワーです。)

どうやら日本の報道では、2016年当時のメンバーほぼ全員が犠牲になった、という第一報が出て以降あんまり続報がなかったからか、今でもこれが一般的に知られている情報らしいけども、実は、③オーケストラから出た犠牲者は約30人中2人。スケジュールの都合だったのか、ホルン奏者1人とコンサートマスター(兼パーカッション・伴奏担当)の1人以外はあの飛行機に搭乗していなかったので、オーケストラはほぼ無事だった。

そして、当時のメンバーのうち、本当にほぼ全員が亡くなってしまったのが②のダンサーチーム。

当時26人いたダンサーのうち、あの飛行機に乗っていなかったのは6人だけ。この6人は全員男性ダンサーで、女性ダンサーは全員亡くなってしまっている。何がキツイって、ダンサーチームの監督・コーチに相当する方や衣装さんなども亡くなってしまったので、本当に本当に壊滅状態になってしまった。

①合唱団はと言うと、コーラスマスターを含む半数以上の30人の団員が犠牲になってしまったのと、さらに厳しいことに、ソリストの8人中5人とチーフコーラスマスター1人を失ってしまった。

世界的にアレクサンドロフ・アンサンブルの顔として認識されている「ミスターカリンカ」ことヴァジム・アナニエフさんと超絶ベテランのヴァレリー・ガッヴァさん、若手エース格のボリス・デャコフさん以外のソリストは全員…。ロシア国内はもちろん、欧州でも顔や声を知ってる人はたくさんいるだろう人たちがみんな亡くなってしまった。

総指揮をとるはずだった芸術監督の喪失

もちろん、これだけの団員を失ってる時点でアレクサンドロフ・アンサンブルには相当の激震が走ったわけだけども、何よりも致命的なのが、アレクサンドロフ・アンサンブルのボスにして、ロシア軍楽隊のトップとして知られた、ヴァレリー・ハリロフ中将も犠牲になってしまったこと。

彼は元々ロシア軍楽隊のトップとして中将の肩書を持ち(他の軍楽隊のボスを考えたら相当上のランク、МВДのボスでも少将なのでさらに上)、スパスカヤ・タワーでも毎年総指揮をとってきた重鎮中の重鎮。超大御所なのである。

そのハリロフ中将が2016年にアレクサンドロフ・アンサンブルの芸術監督に就任したことで、さらなる飛躍と期待が込められていた矢先の事故。確か就任してから半年ちょいぐらいしか経過してなかったはず。

2002年から14年間ロシアの軍楽隊のトップ(兼、国防省中央軍楽隊チーフコンダクターとか肩書多数)に君臨してたレジェンドが、前の所属先を退団してまでアレクサンドロフ・アンサンブルの芸術監督に専念するっつってたあたり、かなりの力の入れようが見て取れたので、アレクサンドロフ・アンサンブルはもちろん、ロシア軍楽隊全体としても相当なショックを受けたと思うよ…。

事故後のメンバーについて

トップがいなくなってしまい大混乱のアレクサンドロフ・アンサンブル。

事故が起きたのは2016年12月25日。存続が危うくなるレベルで団員を喪失したにもかかわらず、例年のスケジュールでいくと、2か月後の2月23日にはTVで大々的に放送される、「祖国防衛軍の日」という軍楽隊として絶対に回避できないイベント出演が待っている状態。さあどうする。

新(旧)監督就任

とにかくボスがいないことには話にならないわけで、中将の後任を受けてゲンナジー・サチェニューク大佐がアレクサンドロフ・アンサンブルの芸術監督に就任。

実はこの大佐、ハリロフ中将がアレクサンドロフ・アンサンブルに来る前に芸術監督を務めてた方。不幸中の幸いとはこの事よねほんと。中将が来るにあたってチーフコンダクターに専念してたんだけど、このピンチで芸術監督に復帰。

大佐この時期本当に大変だったと思う…。元々少しだけ白髪交じりではあったけど、事故後の半年ぐらいで一気に白くなったもんね。ちなみに、事故の前日は大佐のお誕生日でした…。

そして、このピンチの先頭に立つ大佐を支えたのが、チーフコンダクターのニコライ・キリロフ中佐。

大佐とは年齢も1つ違いで、すでに10年以上一緒に指揮者を務めてきていることもあり、大佐からの信頼は厚い(はず)。8年ぐらい北方艦隊軍楽隊のボス(芸術監督)を務め、2003年からアレクサンドロフ・アンサンブルに参加。なぜか所属は今も北方艦隊らしいので、上記のような海軍の制服で登場することも多い。

ちなみに、中佐はモスクワ音楽院卒で、専攻的にもハリロフ中将の直系の後輩にあたる(ご出身も中将と同じくウズベキスタン)。しかも、在学中はサチェニューク大佐の1つ前の芸術監督であるイゴール・ラエフスキー教授に師事した、アレクサンドロフ・アンサンブルの申し子。

とりあえずなんとかなりそうなオーケストラ

オーケストラはホルン奏者1人とコンサートマスター1人を失ってしまったが、ホルン奏者は元々2人体制。コンサートマスターはパーカッションで参加していたことが多かったものの、そもそもコンサートに出ないこともあり、パーカッションが人手不足の時はバラライカとかベーシストに手伝ってもらったりしてたので、全くの空席になってしまったパートはない。

ということで、2人分のカバーは大変だろうけどなんとかいけそう。

ロシア全土から緊急招集の合唱団

人数こそ半分になったものの、失った団員全員がテノール、とかそういうわけではないので、一応、ミニコンサートぐらいの規模の合唱団が出来るぐらいの人数はいる。

問題はソリスト。ミスターカリンカ、ガッヴァさん、デャコフさん以外のソリストを失ってしまい、2016年当時のメンバーで唯一のデュオは2人とも失ってしまった。

一番なんとかしなきゃならなかったのはこのデュオのところだったと思う。というのも、そもそも彼らのテーマソング(?)の「アレクサンドロフの歌」はデュオがリードを務める曲。そして、通常のコンサートではほぼ100%演目に上がる「小麦色の娘」というデュオの人気曲があるから、どうしてもここだけは早めに後任を選んでおきたかったと思う。ソロとは違ってデュオ間で合わせる練習もしなきゃならんだろうし。

ということで、デュオに関してはこれまでの合唱団員からアレクセイ・スカチコフさん、ロマン・ヴァルトフさんが抜擢された。

この2人はもうすでに5年以上はキャリアを積んでて、地方公演などではレギュラーソリストの代打として一時的にソリストを務めた経験がある歌手。ヴァルトフさんはカナダの軍楽隊フェスタみたいなやつでソリストに大抜擢されたこともある。

担当はスカチコフさんがテノール、ヴァルトフさんがバリトンのデュオなんだけど、たぶんヴァルトフさんの本職はテノール。先代デュオの代打で舞台に立った時はテノール側だったし。合唱団員時代も大体テノール側にいて、たまーにバリトン側で登場してたので、声域的にはかなり広いオールラウンダーなのでは。

それ以外は年明け早々に緊急オーディションを開催し、合唱団員の補填とソリストの選抜を実施。ロシアが誇る軍楽隊のピンチに、ロシア中の歌手がオーディションに駆け付け、地区予選(?)を行うほどだったとか。

そして、このピンチには名だたるオペラ歌手も駆けつけ、一躍話題となったのがマキシム・マクラコフさんの入団。国内外数々のコンクールでタイトルを受賞してきた、ロシアでも指折りのオペラ歌手がアレクサンドロフ・アンサンブルにやってきたわけよ。

あ、一応説明しておくけども、アレクサンドロフ・アンサンブルは軍隊上がりじゃなくて普通に音大とか卒業した方たちが入団してくるので、ガチ軍人の集まりではない。まぁ兵役で入団して兵役終了時にそのまま入団するパターンの人もいるみたいやけども。

まぁとにかくそんなこんなで、事故から2か月で合唱団とソリストの選抜を完了させた。

超頑張ったダンサーチーム

事故直後、ダンサーチームは監督とか衣装さんとか含めても6人の男性ダンサー+1人(当時のダンサーチーム副官)しかいなかったんよ。

まずね、存続が危うかった。6人のうち1人は2016年ほとんど公演に出てなくて実質5人。ケガなのか大ベテランなので裏方にまわる準備をしてたのかわからんけど、とりあえずそのほとんど出てなかった1人はフル稼働で復帰することに。

本当に不幸中の幸いというか、6人のダンサーのうち5人は少なくとも5年は在籍してる主力メンバー。その5人+(たしか)2016年入団の新人が1人。しかも小柄ダンサー、大柄ダンサーが揃ってるので、とりあえずソロパートとかはなんとかなりそう。

そして頼もしいことに、2015年だけ兵役で所属していたダンサー1人がこのタイミングで帰ってきてくれた。超ありがたい。

とはいえ、約30人を7人でカバー出来るわけないので、ダンサーチームも緊急招集でロシア中から選抜。

あのね、合唱団もそうだけど、「アレクサンドロフ・アンサンブル」という看板を掲げてる以上、クオリティを下げるわけにはいかんのよ。トップクラスの技術を持った歌手やダンサーが所属するエリート集団なのです。

ということで選び抜かれた新生メンバー。各地の劇場ですでにたくさんのファンを持つようなエース格とかが来てくれました。すごい。

むしろここからが本番。合唱団と違って、ダンサーチームは振り付けを覚えなければならんのですよ。このダンサーチームの演目というのは、全てがアレクサンドロフ・アンサンブルのオリジナルの構成、編曲なわけでして、要はダンサーチームの8割ぐらいが初めて踊る演目。なんぼロシア中の精鋭を集めたとはいえ、一朝一夕で出来るものでもないのです。

正直、事故後初めてのコンサートを見るまで、ダンサーチームは演目の構成を変えるか、合唱団のみの公演になるかもしれない、と思ってた。

でもね、ここで妥協するのはアレクサンドロフ・アンサンブルのプライドが許さんのです。

アレクサンドロフ・アンサンブルは職人芸の塊。彼らは代々どんだけすごい演目を披露してきたのかっていう、ようやくここからがタイトルの内容なんだけど、アレクサンドロフ・アンサンブルの説明でこんだけ長くなったので、一旦記事わけるね…。

すいませんね、こんだけ長々読んでもらったのに本題が次の記事で…。

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