2022年5月は、エーラス・ダンロス症候群(EDS)、過剰運動症候群(HSD)の啓発月間だそうです。
エーラス・ダンロス症候群については以前だいぶ調べまくったのである程度の基礎知識はついたけども、過剰運動症候群については日本だと情報が無さ過ぎて、最新のものでも難病情報センターの研究奨励分野に挙がってるコレぐらいしかない。
そう、日本語の情報だと最新データが2012年…2012…
まぁ調べたところで、まだ日本では過剰運動症候群という概念が正式に存在してないっぽいしな、って思ってたんだけど、せっかくの啓発月間なのでアメリカのEDS系コミュニティサイト、The Ehlers-Danlos Societyで公開されている「HSDとは?」のページを読んでみた。ほんで、メモがてら和訳させていただきました。
精度はアレなので、「へぇ~」っていうただの読み物程度の気持ちでどうぞ。
HSDとは?
過剰運動症候群(HSD:Hypermobility Spectrum Disorders)は関節の過可動(JH:Joint Hypermobility)に関連して発生する一連の症状の総称。HSDは、関節型を含むエーラス・ダンロス症候群などの考えうる病気が否定された後に診断される。
hEDSにも似たHSDは、私たちの健康に大きな影響を及ぼす。どんな問題があろうが、どんな診断が下されようが、これらの影響を適切に管理し、それぞれの患者に合った治療を行うことが重要である。HSDとhEDSの辛さは同等になり得るが、それ以上に大切なのは、どちらも同等のマネジメント、検証、ケアが必要であるということだ。
メカニズム
「関節過可動」は、関節が正常な可動域を超えて動くことを指し、単独で存在することもあるし、複雑な診断の一部として存在することもある。人によっては局所的にいくつかの関節でのみ発生する場合がある(LJH:Localized Joint Hypermobility)。過可動の関節が5か所以上あれば、全般性関節過可動(Generalized Joint Hypermobility)であるとされている。LJHとは違い、GJHは生まれつきや遺伝の可能性が考えられるものが多いが、後天性のGJHも存在する。(ダンスの練習で開脚して痛めてしまったり、関節の変形、筋骨格系、神経系によるものなど)
関節過可動には他のタイプもある。抹消関節過可動という手や足にのみ症状が出るタイプは乳幼児~小児でよく見られ、通常の場合は軽度だったり深刻な影響を及ぼすことはない。もう1つは、徐々に関節の過可動が失われていった高齢者に対して挙げられる*ヒストリカルな関節過可動だ。
一口に「関節過可動」と言っても、無症状の関節過可動、全般性関節過可動~エーラス・ダンロス症候群の病型のひとつである関節型エーラス・ダンロス症候群まで多岐に渡る。その一連に付随して、局所的過剰運動症候群(L-HSD)、抹消性過剰運動症候群(P-HSD)、ヒストリカル過剰運動症候群(H-HSD)、全般性過剰運動症候群(G-HSD)がある。
Generalized HSD (G-HSD):Beightonスコアなどで客観的に全般性関節過可動が認められ、さらに以下のうち1か所以上の二次的な筋骨格系の症状があるもの。筋骨格系関連の型や重症度によって、完全にhEDSの範囲に入るかどうかについても慎重に見極めないとならない。
Peripheral HSD (P-HSD):手足限定で関節過可動が認められ、さらに1か所以上の二次的な筋骨格系の症状があるもの。
Localized HSD (L-HSD):関節単体、もしくは関節群の過可動が認められ、さらに1か所以上の二次的な筋骨格系の症状があるもの。
Historical HSD (H-HSD):昔はGJH(全般性関節過可動)だっただろうという自己申告があり、Beightonスコアが陰性で、1か所以上の二次的な筋骨格系の症状があるもの。この場合、G-HSD、P-HSD、L-HSDや、同様の他のリウマチ性疾患である可能性を除外する検査が必須。
関節過可動のスペクトラム
タイプ | Beightonスコア | 筋骨格系の症状 | 備考 |
無症状のGJH | 陽性 | なし | |
無症状のPJH | 通常は陰性 | なし | 過可動は基本的に手足のみ |
無症状のLJH | 陰性 | なし | 過可動は単一の関節か体の一部のみ |
G-HSD | 陽性 | あり | |
P-HSD | 通常は陰性 | あり | 過可動は基本的に手足のみ |
L-HSD | 陰性 | あり | 過可動は単一の関節か体の一部のみ |
H-HSD | 陰性 | あり | 関節過可動歴がある |
hEDS | 陽性 | あり得る |
二次的な筋骨格系の症状について
関節過可動は、可動域が異常ということ以外は無症状なこともあるが、その可動域の広さがもとで起こった一連の症状が別にある。これらはHSDの診断において考慮されるべきである。(もちろん治療もした方がいい)
外傷
重度の外傷には、脱臼、亜脱臼、軟組織(靭帯、腱、筋肉)の脆弱性による損傷が含まれ、これらは激しい痛みや関節機能の喪失を引き起こすこともある。軽度の外傷は発生時に気付かない程度のとても小さな怪我を指すが、時が経つにつれ、再発を繰り返したり慢性的な痛みが起きたり、変形性関節症の初期段階のような関節の変形を引き起こす可能性がある。
慢性疼痛
時折、外傷をきっかけに繰り返し痛むようになることはあるが、慢性疼痛は(おそらく組織の中の痛みを感じる受容体が繰り返し刺激されたりなどして)痛みの感覚が高まったり(痛覚過敏)、軟組織が正常に機能しなくなって起こっている可能性がある。
*固有受容性感覚の阻害
固有受容性感覚(体のパーツの各位置の状態や動くのにどれくらいの力が必要か、などを感知する感覚)が低下する可能性がある。関節がどこにあってその関節を動かすのにどれぐらいの筋力を使うかを理解していないと、日常生活で出来ることに制限が増えていくサイクルにはまってしまう。
その他の筋骨格系の特性
GJHは、筋骨格系に通常みられないような身体的特徴があることが多く、これらは成長期における”通常より柔軟な”筋骨格系の組織と*外的要因との相互作用によるものかもしれない。一部を挙げると、偏平足(柔軟型)、肘・外反母趾の骨のズレ、軽度~中程度の側弯(背骨のカーブが左右に曲がっている)、脊柱の後弯(過度に後方に曲がっている)、脊柱の前弯(過度に前方に曲がっている)、などがある。固有受容性感覚の低下や筋力低下、それに伴う活動量低下など、様々な要因によって発生した軽度の骨量減少が間接的に関わっているのかもしれない。
関連する症状で筋骨格系に基づいていないもの
関節過可動のメカニズムが直接的な要因でないものもかなりある。むしろこれらはとても深刻だ。QOLに大きく影響を与えるので、治療の一部として管理していく必要がある。これまでで一番関連が強い(それだけではないが)とされているものは、不安障害、起立性頻脈や低血圧、さまざまな機能性胃腸障害、骨盤や膀胱の機能障害である。HSDと診断されたら、このような問題も鑑みて治療をする必要がある。
Source: The Ehlers-Danlos Society
感想やらまとめやら
よそでは結構研究が進んでますね。(小並感)
一応読んではみたものの、他に参考に出来そうな日本語の資料も見つけられてないし、初めて聞くような単語ばっかりで内容的にはだいぶ謎い。
以前、EDSとHSDと健常は、系統的には同じゲージ上にあって、程度によって云々みたいな説明を書いたけども、今回はHSD~hEDSの部分をさらに細かく見て、何がどうなってたらどれの何タイプなのか、みたいなことを説明してくれてるんだと思う。
何はともあれ、一番わかりやすいのは「関節過可動のスペクトラム」の表よね。
これで言ったら私はBeightonスコア陽性で筋骨格系の疼痛持ちなので、少なくとも(?)G-HSDとhEDS以外は否定出来るということではなかろうか。
EDSの記事でも書いたけど、むしろ筋骨格系以外の症状に挙げられてた不安障害、起立性頻脈、低血圧、機能性胃腸障害あたりがピンポイントで当てはまってて、もうマジでこの方向なんやろなっていう謎の自信はついたよ。
いやもうなんぼ可能性の話しても別に着地点は無いのでアレなんですけども。
まぁとにかく「HSD」っつってもこんだけ段階踏んでいろいろあるんだよ~、という内容でした。
Image Source: The Ehlers-Danlos Society
※私は完全な素人です
以上をご理解の上お読みください。