ワイ、基本的にTVが嫌いなのでほとんどTVをつけることがないんだけども、もし海外のTVが映るなら半端ないテレビっ子だったと思う。
アイルランドと何の関係が?と思うかもしれないけど、今回は「TV」をキーワードにアイルランドの面白さをお伝えしたい。
アイルランドのTV局「RTÉ」が優秀過ぎる
RTÉはアイルランドの公共放送局。たぶん、たぶんだけど、アイルランドの地上波は実質コレ一択。NHKがNHK総合とEテレを放送してるように、RTÉも複数のチャンネルを持っているけども、放送局としてはコレ1つ。
どうやら他にもBBCやChannel 4あたりが視聴できるみたいなんだけど、これらはイギリスの放送局なので、「アイルランドの」というとやはりRTÉ一択になるみたい。
で、まず何が優秀かというと、Webプレイヤーが用意されていること。今や当たり前かと思うかもしれないけど、これが国外でも視聴可能なことが素晴らしい。
数年前まではイギリスのBBC iPlayerなども見られたんだけど、権利関係かなんかで見られなくなってしまった…。今では串でもVPNでも見れない。(あかんやつ)
なのに、RTÉはWebプレイヤーはもちろんPodcastも国外で聞ける。
正直言って、BBCが見れなくなった今、英語学習の音声素材の代打はRTÉやで。若干訛ってるって言ったら怒られそうだけど、当然、イギリスではないので俗に言う「アイルランド英語」ではあるけども、系統的にはだいぶイギリス寄りのアクセントなので、RTÉが聞き取れればBBCも聞き取れるし逆もまたしかり。
一般人の会話を聞き取るのはかなり難解と聞いていたのでどうかな、と思ったけども、さすがにTVでは「標準語」的な感じで放送してるようなので、そこまでのクセはなかったよ。
問題は、RTÉはアイルランド語コンテンツが混在してるので、特にアイルランドの歴史や文化系の番組だと急に「読めない!聞き取れない!」ってなることがあるぐらいかな。まぁニュースとかエンタメみたいなやつは大丈夫そうよとりあえず。
受け継がれるアイリッシュ魂
以前、この記事でさらっとアイルランド自体について紹介したことがあるので、詳細はそっちで見てもらうとして、アイルランドではそもそもアイルランド語が使われていたんだけど、歴史的にいろいろあって、近年では英語がメインで使われている。でも、どっちも公用語ではあるんだよね。
話者が少なくなってしまったので、RTÉでもアイルランド語のコンテンツを流し続け、学校でもアイルランド語をしっかり教えるようになり、少しずつ自分たちの言葉を取り戻していってるとか。
そんな自国愛溢れるアイリッシュは、自国の歴史もとても大切にしている。
隣国であるイギリスと長年やりあってることもあって、反英な部分もありつつ、共存の部分もありつつ、とにかくひとことで片付けられない複雑な経緯をたどってる2国間だけども、アイルランドはそもそも国民は少ないし国力も決して「ある」とは言えない規模なので、隣国とのバランスを見ながらアイルランド特有の文化や歴史をとても大切にしていこうとしているのかもしれない。
こんな感想を抱かせるほどのサイトがRTÉである。なかなかのアレだと思うよ。(語彙)
世界一有名なアイルランド人と言えば
ジョン・F・ケネディ元アメリカ大統領、と言いたいところだけど、彼はアイルランド系移民で出身自体はアメリカ。
ということで、一番の有名人はやっぱこの人でしょ。
でたー!!5代目007、ピアース・ブロスナンー!!!!
この人は正真正銘、アイルランドのナヴァン出身のアイルランド人。確か10歳ぐらいでロンドンに移住し、2004年にアメリカ国籍も取得したので、最終的にはアイルランド出身イギリス育ちでアイルランドとアメリカの二重国籍保有者だったりする。(小声)
彼は007で世界的に有名だけども、実はそれ以外にも割とアイルランドでアイルランドの映画を撮影するアイリッシュ魂の持ち主でもあるのだ。
そもそも、デビューはアイルランドの工作員役
ピアース・ブロスナンの映画デビュー作は1980年の「The Long Good Friday(長く熱い週末)」という作品で「1st Irishman」役での出演だったんだけども、この1st IrishmanはIRAの工作員なのだよ。()
まぁとにかくそれから007抜擢まではイギリスやアメリカ中心に活動してて、たまーーーーにアイルランドの映画に出てたりしてたんだけど、007就任後ぐらいから少しずつアイルランドにも軸足を置くようになってきた。
一番の理由はアレだろうね。自分でも「Irish Dream Time」という映画製作会社を立ち上げたことだろうね。要は、やりたいストーリーの映画を自分で制作出来るようになったってことで。
名前にIrishって入れるぐらいだからアイルランド人としてのアイデンティティはかなり強いと思う。この制作会社が最初に公開した作品も「The Nephew」というアイルランドを舞台にした映画。
そのストーリーなんだけどさ、アイルランドでゴタゴタがあってアメリカに渡ったアイルランド人女性とアフリカ系アメリカ人との間に生まれた青年が両親を亡くしたので、母方の親類を頼ってアイルランドに来た話なんだけど、一発目にして結構デリケートな話題で作ったよね。しかもその最初にゴタゴタした相手がピアースっていう相変わらずのチャラい役回り。どういうキャラか自認してるのかなんなのか。
意外と当たりのキツいアイルランド人のみなさん
さて、制作会社を立ち上げて以降、割とアイルランドが舞台の映画を撮影してきたピアース。同胞であるアイルランドの人たちは、ピアースの活動に対してどんなリアクションだったのか。
実際はリアルタイムで見てないのでわからんけど、ネットに現存するBBSとかの会話を見ると、まず007就任当時、もちろんアイルランドでも007シリーズは人気なので、基本的には「我がアイルランドからボンド俳優が誕生したぞ!すげー!」みたいな好意的意見が大半だったらしいけど、ごく一部の方が「アイルランド人が何でイギリスのスパイやってんねん」みたいなことをおっしゃってたみたい…
まぁ確かに2国間の複雑な歴史を思えば、「イギリス政府のために働くエリートスパイて!よりによったな!」って思ってしまう愛国心の強い方もいるかもしれんね。でもさ、そこはホレ、エンターテイメントとして穏便にしてほしいというかさ。
あと、ちょっとピアースが気の毒だなって思ったのが、「Evelyn」や「The Foreigner」のレビューで軽く論争になってた「アクセント問題」。
ピアースはどっちもアイルランド人の役で出演してるんだけど、どうやらアイルランド人からしたら違和感ありまくりのアイルランド訛りで頑張ってたらしいんよね。「お前アイルランド生まれちゃうんか」とか「アクセントがオーバーすぎてちょっとバカにされてるように聞こえるんだけど」とか結構な言われよう…。
いやそこは勘弁してあげて…。子供の頃までしかアイルランドには住んでなかったし、ロンドンに移住した時に学校でアイルランド訛りをバカにされて一生懸命ロンドンのアクセントに直したり、その後アメリカで長年活動してたんだから急には完璧に戻らないって…!
さらに気の毒なアクセント問題は007時代にも起きてて、007デビュー作のGoldenEyeの時は相当完璧なイギリス英語で演じてたピアース、4作目ぐらいになるとだいぶ崩れてきてるのがワイでもわかるぐらい。これがイギリス勢はかなり気になったらしく、「結局、どこのネイティブなんだ問題」が勃発してた。
【これまで名前を挙げた作品のうち、The NephewとEvelyn以外は007含めて全部U-NEXTで配信中!たぶんここが一番ピアース映画多いよ!】
英語圏の007ファン入り乱れての論争になってて、「スコティッシュネイティブ参上、一部スコットランドっぽいけど確実にネイティブではない」とか「GoldenEyeの時点でロンドンのどこアクセントよコレ?」とか「ワイ、アメリカだけど東部の(ナントカ)ってところのアクセントに近い気がする」とか「彼は”ピアース語”の使い手なんだよ…」とか大激論。(当時のBBS探したんだけどちょっと見つからず…)
まぁイングランド出身の007とかむしろロジャー・ムーアとダニエル・クレイグぐらいしかいないしね…
とかなんとか言いつつやっぱり自国が誇るスター
役どころやアクセントでいろいろ言われはしたけども、やっぱりピアースはアイルランドが誇る世界的スターである証拠をRTÉで発見した。
リンク先はRTÉ Archivesでの「Pierce Brosnan」の検索結果。
2ページ目以降はだいぶ関係ない検索結果だけども、ネットが普及する前、ピアースが撮影でアイルランドに来た時は、ちゃんとRTÉが取材に行ってたらしい。(ちょいちょい喧嘩売りに行ってるけど)
ピアースはアイルランドで仕事するのがうれしい、とか、撮影場所の観光資源化とか撮影環境誘致とか、撮影スタッフとしてアイルランド人の雇用とか、アイルランドの映画業界にもプラスになる働きを目指してるよ、みたいなことをちょいちょい放送してたのね。
正直言って、007前と後で結構扱い変わったんだろうなってのはこの少ない本数の動画からも見て取れるけども、とにかく出身地のナヴァンに1965年以来初めて帰って来た時のニュースは平穏無事なトーンでよかった。もうこの頃にはアイルランド側でもだいぶいい印象になってたのかな。
ネットが普及した後は、他国と同じように1人の世界的セレブリティとして話題を扱うようになってるのでご安心を。(むしろ昔の扱いの酷さにだいぶショックを受けてたワイ)
今すぐ楽しめるRTÉ
若干トーンが重くなってしまったので、改めて、今からでも毎日でも楽しめるRTÉのコンテンツを紹介していこう。
画像クリックで動画のページにいけるけど、それぞれ公開期間が決まってるみたいなので、すでに公開終了してたらゴメン
まず最初は安心の動物番組「I Want a Pet」。1エピソードが約6分のお手軽番組で、ペットと暮らす子供たちが、プレゼンターのイベットおねえさんに自慢のペットと仲良くできるようにいろいろ紹介してくれる癒し系番組。
元々子供向け番組なので難しい単語も少ないし、割とゆっくりしゃべってくれるので見てて疲れないと思うよ。
こちらも6分ぐらいの短い番組、「Letters from Lockdown」。
実は2020年から始まったコロナウィルスの感染拡大で、アイルランドはすでに3回もロックダウンせざるを得ない状況に追い込まれてるんだよね。
ということで、コロナ禍で会えない人にお手紙を書こう、という番組。高齢でケアハウスに入ってる親族に、元々メンタル不安定な方がお友達に、新しく生まれてきたひ孫に、などなど、どこまでエピソードが追加されるかわからんけど、1つ1つは短くてお手紙を読み上げる番組なのでリスニングにはいいんじゃないかな。
これは完全に趣味で食いついて結局最後まで見た「Dan Breen – My Fight for Irish Freedom」というドキュメンタリードラマ。
Dan Breen(ダン・ブリーン)は実在した政治家で、それまではIRA活動家だった。アイルランド独立戦争時のキーパーソンと言いますか、開戦のきっかけを作ったとされる人物。
IRA云々とかアイルランド独立云々ではマイケル・コリンズが有名だと思うけど、ダン・ブリーンに焦点を当ててるのはあんまりないと思うので、アイルランドの歴史に興味がある人は面白いと思う。
ちなみに、時代が時代なだけあって、当時の状況を証言してくれてる人たちがちょいちょいアイルランド語話者なので、突然英語字幕を読まなきゃならなかったり、英語話者とのスイッチが多いのでちょっと大変。
しかも政治的な単語とかよく知ってないとなかなか意味が分からんと思う。ワイも正直1回見ただけじゃ「大体こういう話なんだなぁ」ぐらいしかわからんかった。むしろ先にアイルランド独立戦争前後の基礎知識があるとスッと理解出来るかも。
まぁガチでアイルランドのそれぐらいの時代の歴史云々を知りたい人はRTÉのこの辺とか…
この他にも、徹子の部屋系の老舗トーク番組やクイズ番組、子供向けにお話を読んでくれる番組などなど、ニュース、スポーツ、音楽、もういろいろありすぎてアレなので、リンクつけとくから実際に見に行って面白そうな番組を探してみてね。
とにかくTV環境がうらやましい
これだけ充実したRTÉと別にBBCの一連も視聴出来るってアイルランド最強じゃない?
とにかく、海外勢はフリップめくりながらじゃないと何も説明出来ない情報番組とか、他人をイジって笑いをとったり何かにつけて罰ゲームのバラエティとか見ないでいいのが本当にうらやましい。
あと、TVで見る女性がちゃんと大人っぽくてうらやましい。下がり眉の情けない感じを出していくメイクだったり、アニメ声でちょい上目遣いみたいな、とにかく子供っぽい感じの女性が本当に少ない。(突然めっちゃディスる)
あれは本当になんだろうね?世間が良きとして暗に要求し続けてしまってた集大成なのかね。どうも苦手で…。「はよ大人になってくれ…!」って切実に思う。
なんか最後に文句まみれになったけど、面白いコンテンツならTVでもネットでも課金してでも見たいので、頼むよ日本…!
おしまい
永遠のライバル、イギリスの話はこちら