2022年にもなって、2年遅れでヤバいコンテストの存在を知ってしまった。
ユーロビジョンBIG5の一角、ドイツ。
毎年BIG5諸国はやる気がないと思われがちだけど、ひそかにドイツだけは超やる気があった。ありすぎて自国内で超頑張ってたので、どうしてもユーロビジョンを楽しみたかった彼らの努力を見て、一緒に涙してほしい。
コロナ禍の2020年、ドイツで#FreeESCが開催されていた
新型コロナウィルスの世界的蔓延で、様々なイベントが中止になった2020年。
毎年5月に開催されるユーロビジョン・ソング・コンテストも、初の中止に追い込まれた。
そんな中、実はドイツ国内で「#FreeESC」というイベントが開催されていたのである。
#FreeESC、正式名は、「Free Europian Song Contest」。
そう、一個も「Eurovision」とは言ってないけど、Eurovision Song Contestと同じ略称を用いることでユーロビジョン風を匂わせまくっていたこのイベント。まさに「仮想ユーロビジョン」だった。
#FreeESCとは
#FreeESCは、ドイツやオーストリア、スイスなどのドイツ語圏で放送されている「ProSiben」というドイツの放送局が主催する音楽イベント。
ドイツ語でSiben=7の衛星放送なので通称「Pro7」。要は、日本で言うBSの7チャン、BSテレ東みたいなもんです。(絶対違う)
しかも、Pro7はEurovisionを制作するEBU(欧州放送連合)に加盟していないので、本当にユーロビジョンとは全く関係ない放送局が主催する謎の仕様。
#FreeESCの見どころ
元々は2005年から2015年まで開催されていた、Bundesvision Song Contestっていうドイツの州対抗歌合戦イベントをベースにしているようなので、たぶんドイツ的には割と馴染みのある段取りで進んだのではなかろうか。
とはいえ、ユーロビジョンしか見たことない外国人には結構引っかかったポイントがあったので、ここで一挙まとめてご紹介。
基本的に〇〇(国名)系ドイツ人
州別対抗なら普通に「〇〇州代表」でいいんだけど、仮想ユーロビジョンともなるとそうはいかない。
けども、コロナ禍で各国代表は呼びづらい。まぁ自由に呼べるなら本家も中止になってないしね。
という状況で導き出した答えは、「外国にルーツを持つ歌手に集まってもらう」。
ハイ!ここで第1回#FreeESC(2020年)の代表者一覧をご覧いただきましょう。
登場順 | 国/アーティスト名 | ルーツ |
01 | 🇳🇱 Ilse DeLange | オランダ人 |
02 | 🇹🇷 Eko Fresh feat. Umut Timur | トルコ系クルド人移民 |
03 | 🇮🇪 Sion Hill | 在独アイルランド人 |
04 | 🇭🇷 Vanessa Mai | 父がクロアチア人 |
05 | 🇧🇬 Oonagh | 🇮🇹父🇧🇬母でドイツ育ち |
06 | 🇦🇹 Josh. | オーストリア人 |
07 | 🇵🇱 Glasperlenspiel | ポーランド人移民 |
08 | 🇬🇧 Kelvin Jones | 在独ジンバブエ系イギリス人 |
09 | 🇰🇿 Mike Singer | 両親が🇰🇿出身の独系ロシア人 |
10 | 🇩🇰 Kate Hall | 🇩🇰父🇬🇧母でドイツで活動 |
11 | 🇪🇸 Nico Santos | スペイン育ちのドイツ人 |
12 | 🇮🇹 Sarah Lombardi | 母方の祖父母がイタリア人 |
13 | 🇨🇭 Stefanie Heinzmann | スイス人 |
14 | 🌕 Der Astronaut | ドイツ人 |
15 | 🇮🇱 Gil Ofarim | 父がイスラエル人 |
16 | 🇩🇪 Helge Schneider | ドイツ人 |
結構頑張って情報集めたよ…!ほめて…!
こんな感じで、とにかく外国にルーツがあったり、主にドイツで活動している外国人歌手だけでここまで揃ったのすごくない?
細かい謎があると思うので、補足していくよ。
大きく4パターンでまかなう
とりあえず、隣国でもあるオランダ、オーストリア、スイスは、本当にオランダ、オーストリア、スイスから呼んだ歌手ね。
で、アイルランド、イギリス、デンマークは、在独のアイルランド人、イギリス人、デンマーク人の歌手。(アイルランド代表はその後拠点をロンドンに移したらしい)
トルコとポーランドは移民出身の歌手で、クロアチア、ブルガリア、カザフスタン、イタリア、イスラエルは外国にルーツを持つ親族がいるドイツ育ちの歌手。
スペインだけは逆パターン(?)で、両親ともにドイツ人なんだけど、彼が生まれてすぐに家族でスペンに移住したため、スペイン育ちのドイツ人ということらしい。
カザフスタン代表
カザフスタンは中央アジアの国なので、間違いなくEuropeanではない。
とはいえ、本家ユーロビジョンにオーストラリアが参戦してることもあり、まぁ細かいことは気にするなの精神だと思われる。
Wikipediaが言うには、ご両親はカザフスタン出身のドイツ系ロシア人らしいので、出てきた国名の3分の2はヨーロッパだからホレ。(強引)
ちなみに、「トルコは?」と思われた方もいらっしゃるかもしれませんが、トルコは近年出てないだけで、ユーロビジョン参戦歴は結構あるのよ。西アジアって言われたらまぁその通りなんですけども。
そもそもユーロビジョンの参加資格はヨーロッパの国じゃなくて、欧州放送連合加盟国だからね。
🌕「月」代表
月…?ってなったよね。わかる。私もなった。
ちょっとでも参加国数を増やしたかったんですかね。それとも生粋のドイツ人でどうしても参加したい人がドイツ代表以外にもいて、苦肉の策での「月」なんですかね。
正体を明かしてしまうと、「Der Astronaut」というのは日本語で「宇宙飛行士」という意味らしく、中の人はMax Mutzkeだそうです。
このMax Mutzke、2004年ユーロビジョンのドイツ代表だそうで。(!)
Sarah Lombardiの謎
もはやパーソナルなお話なので掘り下げづらいんだけど、イタリア代表として参戦していたSarah Lombardi、母方の祖父母がシチリア島出身のイタリア人だそうで、彼女自身は日本で言うケルン(ドイツ)出身のイタリア人クウォーターらしい。
で、「Lombardi」は確かにイタリア系の姓ではあるけども、彼女の本名ではない。(?)
この「Lombardi」は、同じくイタリア系ドイツ人歌手Pietro Lombardiの姓であり、結婚によってこの姓を名乗っている。が、その後離婚している。
何が謎って、離婚自体は#FreeESC開催前の2019年2月なんよね。そして、1年以上経過した2020年5月に#FreeESCが開催され、その半年後ぐらいにサッカー選手のJulian Büscherと婚約し、2021年に再婚。
再婚時にはJulianがSarahの籍に入ったらしく、Julian Engelsと名乗っている。Sarahの本名はEngelsだったのか!!(そこ?)
とにかく、なんで#FreeESC参戦の時点で「Sarah Lombardi」と名乗っていたのか謎は残るけども、母方がイタリア系で本名の「Engels」自体はドイツ系の姓なので、「Lombardi」でイタリア感をアシストしたかったのかな。
元々はSarah & Pietroとして活動してたみたいなので、世間的にも「Sarah Lombardi」で浸透してたのかも。しらんけど。
割と豪華な出演者
ローカルな仮想ユーロビジョンとはいえ、Max Mutzkeのようなユーロビジョン代表経験者も参戦するぐらいの力の入れようなので、ホストやゲストもやけに豪華なんですよ。
ホストConchitaの絵力が強い
誰よりもインパクトを残してくるタイプのホスト。
ドイツ語圏で直近の優勝者であるConchitaは、ユーロビジョン関連のイベントには欠かせない存在。
Conchitaがいるだけで一気にユーロビジョンっぽさは出るけども、その一方で、出場者のキャラがかすんでしまうほどのインパクトを残しがちなので、出力調整が若干難しい。
そんなConchitaと一緒にホストを務めたのは、ドイツ系TV局のProSibenやZDFで活躍するドイツ人プレゼンターのSteven Gätjen。
ポーランドのスポークスマンにLukas Podolski
サッカーは全くわからないのでイマイチすごさをお伝え出来ないかもしれんけど、サッカーを全くしらないワイでも聞いたことあると思ったお名前なので、たぶんすごい人なんだと思います。
ちょろっと見たところ、どうやら元ドイツ代表としても活躍したすごい選手が、2017年から2019年まで日本のヴィッセル神戸でプレーしてたそうで!あーそれで聞いたことあったんだろうな!
オランダのスポークスマンにDuncan Laurence
2019年優勝者のDuncan Laurenceがオランダのスポークスマンとして登場。
Eurovision 2020が開催されいてれば、間違いなく本家ユーロビジョンでのパフォーマンスやホストが期待されたであろうDuncan Laurence(さすがにホストはやらんかな)をスポークスマンに呼んじゃうのすごいね。
アレよ、スペイン、クロアチア、カザフスタン、デンマークあたりは、それぞれ各代表者のご家族がスポークスマンで登場してる一方で、なんだかギャップがすごいww
イギリスのスポークスマンにMel C
イギリスは、なんと元Spice GirlsのMel C。
どういう人選なんかなと思って調べてみたら、Mel Cはユーロビジョンがお好きなのかね。どうやら2018年のフィンランド国内予選にもゲストで登場してたり、「ユーロビジョンいいよね~」みたいなことを2007年のインタビューでも語ってたみたいだし。
本家ドイツ国内予選よりよっぽどやる気ある歌多い
2020年に参戦した全16曲をシュッと確認する用の動画がこちら↓
サラっと聴いただけでも、キャッチーな良曲もあるし適度なクセつよもあるし、間違いなく本家のドイツ国内予選よりやる気ありそう。
唯一「あっこれ怪しいぞ」ってなったのは一番最後のドイツ代表。いやほんとどうした?ドイツは本当にそれでいいの?ってのを代表にしがちなのかしら。ドイツ的には本当に「勝てるぞ!」ってのを選んでてこの感じなのだろうか。
個人的にはクロアチアが一番よかったかな。
#FreeESC 2021も開催されてた
2021年の本家ユーロビジョンは無事開催されました。
その一方で、そもそもユーロビジョンの代替イベントとして開催された#FreeESCも、なぜか2021年大会が開催されました。
本家ユーロビジョン2020年ドイツ代表のBen Dolic参戦は泣ける
中止にならなければ、本家のユーロビジョンでドイツ代表としてパフォーマンスを披露してたであろうBen Dolic、2021年のドイツ代表はそのままBen Dolicにスライドとはならなかったので、#FreeESCにスロベニア代表として参戦…
そう、彼は主にドイツで活動するスロベニア人歌手なのだ…
イングランド代表の曲が「メキシコ」
イギリス代表をイングランド代表とスコットランド代表に分けたのはさておいて、イングランド代表の曲がメキシコて!!
しかも、Mighty Oaksはアメリカ人、イタリア人、イギリス人の3人組です。
誰一人メキシコもドイツもかすってない。(困惑)
ポーランド代表が抜群に良かった
2021年と思えないぐらい忠実な忠実なレトロ系じゃない?マジで絶妙に80年代のユーロポップ。大好物です。
この「Fantasy」は、Freddy MärzとMartin Heinが1990年代に結成したデュオで(自分がググる時用メモ)、主にドイツで活動しているらしい。Spotifyはこちら。
まだ全然チェック出来てないけど、どうやら基本的にこのテイストっぽいのでぼちぼち聴いてみようかな。
無駄にJohnny Logan登場
アイルランドのスポークスマンとして登場したのが、本家Eurovisionの帝王Johnny Logan。すごいな…
改めて「本物のユーロビジョン・ソング・コンテストのレジェンド」って紹介されてるのはちょっと笑った。あくまでも自分たちは代替である、という自覚よww
あ、ちなみに、イタリアのスポークスマンは、前年のイタリア代表だったSarah Lombardiの元夫、Pietro Lombardiだったみたいです。
幻の2年間
なんせコロナ禍で本家ユーロビジョンが中止になったことで始まったイベントなので、さすがに2022年は予定されていないらしい。(少なくともこれを書いてる現時点では)
まぁ2021年の時点で本家が開催してるのになぜ、とはなったんだろうから、本家の復活とともにお役御免とはいえ、本家の国内予選もこれぐらいのやる気を出してドイツ代表を決めてくれ、と思うぐらい楽しかった。
あ、一応2021年大会のサラっと聴く用まとめ動画も置いておきましょうかね。クロアチアは2年連続でよかったなぁ。
Image Source: ProSiben | Source: ProSiben / Eurovoix