これまで、アレクサンドロフ・アンサンブル自体の説明と、合唱団の推しどころを力説したので、今回はオーケストラについて。
私のサポート時期は2016年前後~現在。ロシア語能力ほぼゼロ、共産趣味はありません。ニワカなので、肩書や経歴などは全て頭に「たぶん」をつけて解釈してください。翻訳ミスった状態で見聞きしてるかもしれんので…
ロシアのアコーディオンはハードモード
このアコーディオンのような楽器、「バヤン」っていうロシアの民族楽器で、この方はアレクサンドロフ・アンサンブルのバヤニスト(バヤン弾く人)のエース、アレクサンドル・バガティリョフさんです。彼、顔色ひとつ変えずめちゃめちゃエグい演奏するから。マジで。
アコーディオンというと、通常は右手側で演奏する部分はピアノと同じような鍵盤がついてるんだけども、バヤンの配列見て…なにこれ…覚えられる気せんのやけど…
もちろん、アコーディオンと同じように左手側のボタンもちゃんと使うからねコレ。
それではこのバヤニストのスーパープレイをご覧頂きましょう、「小麦色の娘」。
バガティリョフさん(メガネなし)は、ちょうどデュオの真後ろに座ってます。どう?バヤンのパート聞き取れた?わかりづらい?
じゃ、こちらでどうぞ。
こちらの演奏は先ほどのコンサートで演奏してるのとほぼ同じ譜面。ソロなのでコンサート時には弾かないAメロ部分や、デュオのサビ部分のメロディも演奏してます。それ以外はコンサートとほぼ一緒のはず。
指見て指。動き早いし縦にも横にも移動するおかげでどのボタン押してどの音鳴ってるのかさっぱりわからなくない?漫画で描いたら間違いなく早すぎて指が見えなくなる描写になるやつ。
相当やりこまないとここまで滑らかに指動かんやろ…。配列覚えるだけでも大変そうなのに。(まだ言う)
実は全員がエース
アレクサンドロフ・アンサンブルのバヤンは近年だと大体4~6人在籍してます。
その中でも曲によってバヤンのパートが複数に分かれてることがあるので、難しいパートをエースがやってるのかと思いきや、本当にただ単にパートが分かれてることがあるってだけで、全員が同じようなえげつないスキルの持ち主なのだよ。
こちらの、ほとんどパートが分かれてない「カリンカ」をご覧いただきましょう。
3:24頃に出てくる右のバヤンの彼はアンドレイ・ヴァシリエフさん、彼も真顔でエグい動きしとるね。左のバヤンの彼、ドミトリー・ザハロフさんも手元は見えてないけど、同じパートを演奏してるので同じ動き。さらには先代のエースでコンサートマスターのアレクサンドル・モグールキンさんもまだ在籍してるので、マジで全員がエースの状態。バヤンはみんな余裕でこの動き出来るんよ。こんな演奏出来る人がホイホイと存在してるわけよ…。
そもそも、ピアノと同じような鍵盤がついてるアコーディオン奏者もさ、プロの人ってとんでもない動きするじゃん?それがさ、アコーディオンの倍ぐらいボタンついてるバヤン(わざわざ数えた)でこの動きはエグいっしょ…
ロシアのローカル楽器と言えばバラライカ
「バラライカ」って名前自体は聞いたことあるっしょ?
なんか三角形のギター系の形状のやつなんだけども、まぁーーーー繊細な音なんよ。すっごい繊細。キレーな音なんだけど、たぶんクラシックギターほど音量出ないので、オーケストラでは人数いないとすぐかき消されちゃう。
そんな繊細なバラライカチームにも職人がいる。
こちらが現職のバラライカエース、コンスタンチン・イグナチェフさん。現職の、という意味は、現在のバラライカはほぼ全員がこれまでエースを張って来た猛者たちの集まりなので、世代的に今エースを務めているのが彼ってだけで、こちらも実質全員エース。
最初の2分はバラライカの繊細な音色をお楽しみください。で、2:10ぐらいから真の力を発揮します。もはや彼の指の速さに解像度が追い付いてない()
関節脆弱勢のワイからすると、左手の細かさもすごいんだけど、ずーっと振り続けてる右手はいつかポロっと取れるんじゃないかと思うぐらいの動き。
そうそう、バヤンのエースとバラライカのエースはデュオとしても登場します。
先ほどのバガティリョフさんとイグナチェフさんのコンビ。職人芸を楽しむこのセッションは、コンサートでも毎度大喝采を浴びる人気プログラムなんよね。
ロシアの民族楽器と職人芸をお見せできるからか、特にロシア国外でのコンサート時で披露されることが多い。
普段は指揮者で隠れちゃったり、譜面台で手元がよく見えなかったりするので、こうやってちゃんと見せてくれる演目があるのはいいよね。
オーケストラの加速スキル
バヤンやバラライカのように、ただでさえ譜面の大半が細かそうなパートがあるにもかかわらず、超ハイスピードなレパートリーがあるんよ。
それがこの「タチャンカ」。
チャイコフスキーホールのライブ配信の悪いところだけど、演奏中に左右のモニターに流してる映像にスイッチするんよね。(突然の文句)
これ、いろんなパートに集中して何度も聞くと本当に面白い。
「タチャンカ」って機関銃積んだ馬車(コレ)のことなんだけど、この馬感を出すのに、ドラム1人がずーっとカッカカ カッカカ カッカカ カッカカなんよ。序盤で機関銃のタタタタタタタタタッ!って音を挟む以外は最初から最後まで。地味にこのリズムをずーっと続けるの大変だと思う。とりあえず箸でもなんでもいいからやってみそ。この速さでやってたらだんだん何だかわかんなくなってきてズレてくるから。
ワイ、中学校の時に吹奏楽部でパーカッションやってて、こういうのめっちゃ苦手だったので、こんだけ正確に叩き続けられるなんて両腕にメトロノームの神様でも宿ってるんじゃなかろうかと思う。ちょっと崩れたらバリ目立つ音だし、メンタルも強くないとやっていかれん。
ちなみに、このメトロノームの神様はラミール・ハビブリンさん。2016年から参加する優秀な若手ドラマーです。
あとね、金管一同の細かさ聞いて。特に、トランペットとかスパーン!とフルで張った音まではいかないぐらいの強さでパパパッ パパパッとか連発で決められるのすごない?トランペット奏者ってそういうもん?1人ならまだしも、3人4人でああやってキレイに揃うもん?すごいよね?
ほんでイントロや節々で登場するフルート、ピョロロロロロロがめっちゃ速ない?文字で説明するとすっごいアホっぽいんやけど、そもそも木管一同はすごいんよ。フルートとオーボエは1人ずつしかいないので、2人ともそれぞれが木管の屋台骨なわけですよ。ソロでメロディを担当することも多いのでマジで木管の柱。
大前提なんだけどさ、「タチャンカ」って少なくとも2010年代以降では2017年に初めてアレクサンドロフ・アンサンブルのレパートリーになった曲のはずなんよ。
初出のコンサートから年々早くなってて今やこの速さで落ち着いてしまったっていう。この曲の時の指揮者はサチェニューク大佐率高いんだけどさ、大佐こういうソワソワイソイソする感じの曲たぶん得意。「ベルリンからの帰還」とかね。こういう曲の時、しれーっとテンポ上げてくるからね大佐。それでもついてくるオーケストラも大概やけど。
ちなみに、大佐のおかげでキリロフ中佐版でもこの速さ↓
ハイ!ということでオーケストラについては一旦ここまで。